FIFAワールドカップ北中米大会
グループF第1節
日本対オランダ(2-2)
みんなもこれを見ながら試合を観よう!
楽しいよ!
総評
日本サッカーにとってとても大きい勝ち点1だった。
前回大会でもドイツ、スペインに下馬評を覆す金星を挙げていたが、
今回はフルメンバーのオランダ相手に互角の戦いを見せての引き分けであった。
今回オランダは日本の攻撃スタイルを分析したうえで対策してきていた。
日本の攻撃は5枚で仕掛けていくことが多いが、それに対して、
オランダはボール非保持の場合に、5バックで対峙して数的不利に陥らないように
警戒していた。
また、リードした後半途中からは、失点しないために守備的な交代を行っている。
これは、オランダ側が日本に対して警戒をしていた証左であり、格下とみていたら
しなかったであろう選択肢と思われる。
しかし、結果として日本は2度ビハインドを跳ね返しての引き分けに持ち込むことに
成功した。
日本を格下ととらえていない欧州強豪チーム相手に勝ち点1を取れたということは
2022年のカタール大会からまた一つステップアップできたと捉えて良いだろう。
一方のオランダ代表は対策をした上で引き分けに持ち込まれたのは痛恨だった。
グループリーグ突破を争う相手に引き分けであればよかったが、二度も追いつかれた
うえにイエローカードが3選手に出ていることから次戦以降のプランの枷に
繋がっている。
引き分けとはいえ、明暗分かれる結果といえよう。
日本チーム感想
森保監督の采配が見事にハマっており、クーマン監督を上回った。
この試合を迎えるまでにチームの要であった三苫・南野・遠藤の3選手を失っており、
更に冨安選手がけが明けからコンディションが不安視されている状態であった。
チームとして下記4点が課題となっていた。
①2シャドーにおける久保の相方
②左WB
③ボランチのコンビ
④最終ラインの組み合わせ
試合前までは下記案で解決を図るのでは?と言われていた。
①右WBの伊東選手のコンバート
→シャドー適正があり、運動量・突破力に長けている。
②中村選手の起用
→三苫選手と同様の役割を果たせる。
③鎌田選手と佐野選手(or田中選手)
→中盤のコントロール役とボール奪取役でバランスが取れている。
④伊藤・板倉・冨安の3選手
→走行試合で一番長い時間プレイした3選手。冨安選手のコンディションが懸念点。
一方で森保監督はオランダ戦に対しては下記対策を施した。
①前田選手を起用
②中村選手の起用
③鎌田選手と佐野選手
④伊藤・谷口・渡辺の3選手
②、③は同様であったが、①、④はオランダの戦い方を見込んでの用兵であった。
①は、相手の攻撃の起点となるMFデヨング選手を前田選手とFW上田選手で
マークすることで自由を奪った。
これによって、オランダ代表の攻撃力を削ぐことに成功している。
前田選手はスプリントの速さや豊富な運動量によって相手守備陣を翻弄するプレーが
特徴であるが、その特性を相手選手を封じることに活用していた。
(同じく攻撃が特徴の堂安選手も相手左サイドを封じていた。)
こちらについてはあくまで対オランダでのプランであり、より攻撃的に進める場合の
プランについては、試行錯誤中なのか腹案がある状態と思われる。
また、久保選手が負傷交代しており、負傷状況によっては2シャドーの起用や選手構成全体の見直しも必要になる可能性があり、予断を許さない。
④については、対人守備に長けた渡辺選手を右CBに配置することで、相手左WGのガクポ選手、マレン選手との競り合いに勝とうという意図があったように感じる。
また、フルタイムのプレーに不安がある冨安選手をクローザー兼攻撃の起点として
後半から投入することができたのも大きかった。
谷口選手についても、中央CBとしてライン統率や両CBのカバーなどで非常に効果的にプレーしていた。
①に対して④については、谷口選手が高いパフォーマンスを発揮したことにより、
プランによって渡辺選手のところに板倉選手を配置することもでき、
一定の解を見いだせたのではないかと思う。
試合開始から日本は先制点を狙いやや攻撃的に入っていったが、
オランダ側がしっかり守備のブロックを作ったことで成功せず、
逆にオランダ側のサイドからの攻撃を受けてしまった。
開始直後のマレン選手のシュートを鈴木選手がセーブできていなければ、
一気にオランダ側に流れを渡していただろう。
その後は両者の戦術の読みあいもあり、膠着状態に。
後半は開始直後にコーナーキックから失点。
こちらに関しては、ファン・ダイク選手のヘディングがサイドネットを揺らしており、
鈴木選手でもノーチャンスだったように思える。
しかし直後に中村選手のゴールで同点にする。
失点までは守備的であったが、直後から久保選手を軸に攻撃を展開。
得点シーンも伊藤→中村→久保→中村というパス回しからのシュート。
中村選手のシュート精度もさることながら、オランダのDFファン・デ・フェン選手の
ラインコントロールミスで下がってしまい、前田選手がオンサイドとなっていた。
ファン選手はクラブチームでもラインコントロールエラーを何度も起こし失点に関与していることから、起こるべくして起こったシーンだったと言える。
同点においたのもつかの間、再度失点してしまう。
相手WGサマーフィル選手の美しいシュートで、こちらもサイドネットに刺さっていた。
失点までの中で、フラーフェンベルフ選手のところにプレスにいった前田選手と鎌田選手が交錯してプレスがかからず、更にそこからサマーフィル選手へのパスも取れず、
中村選手がサマーフィル選手をフリーにしてしまっていた。
中村選手のカバー役の伊東選手はサマーフィル選手の後ろから走りこんでいたダンフリース選手をマークする必要があり、サマーフィル選手が完全にフリーの状態で
シュート体勢に入ってしまったのが良くなかった。
イングランドプレミアリーグで活躍アタッカーをゴール前でフリーにすれば、
あのシュートが来るという学びをチームとして受けてしまった。
中村選手は欧州トップリーグでも通用する攻撃センスの持ち主である一方で、
守備面に関しては課題を抱えている選手で、正直フランス2部でも守備は危ういときがあった。
その課題がもろに出てしまった結果になってしまった。
そういう意味では三苫選手と比較しても伸びしろがあるとポジティブにとらえてもらいたい。
失点後、日本が先に選手交代を行う。
前田選手に代わって伊東選手を起用。
試合開始から抜群の運動量で相手を封じてきた前田選手の体力的な部分と、
ビハインドとなったことで攻勢に出るために本職である右サイドで伊東選手を
起用した形だ。
更に飲水タイムを挟んで、この試合の分水嶺となったであろう交代をオランダが行う。
この交代は1点リードを守るための守備的交代と思われるが、前線で守備にも貢献していたマレン選手に代わり、メンフィス選手を投入したのが悪手であった。
攻撃面では1番手でありながらコンディション不良の上、そもそも守備貢献度が低い
メンフィス選手を起用することで、日本のボランチ以下への圧力が下がり、ボールを持てるようになった。
オランダのクーマン監督としては、1点を守りに行きつつ、隙あれば得点を狙う意図だったようだが、
完全に失敗に終わった。(実際にオランダではこの采配が猛批判を食らっている…)
また、試合終了まで20分近くある中で守勢に転じたのも早計だったと思う。
そもそも飲水タイム前もオランダに主導権があり、もしかすれば1-3として試合を終わらせることもできた。
結果として日本に主導権を渡してしまい、オランダとしては厳しい後半終盤を迎えることになる。
一方で日本にも久保選手負傷交代というアクシデントが発生。
堂安・渡辺の2選手交代はプラン通りだっただろうが、久保選手の交代は想定外であっただろう。
日本の攻撃の核である久保選手の負傷具合が厳しくないことを祈るばかりである。
結果としてはプラスになったが、ここで小川選手を投入。
堂安・渡辺の右サイドコンビは、相手左サイドの攻撃を抑える役目を確実に果たした。
堂安選手はクラブチームではアタッカーとして名を馳せている中、相手選手を消す役目を果たしきったのは非常に尊敬に値する行為である。
相手左サイドを消耗させ、その後に抜群の守備力展開力を誇る冨安選手、クロス精度の高い菅原選手の投入、オランダリーグで活躍する小川選手の投入は、結果的に相手の守備的交代に対する回答として抜群の効果を発揮した。
この結果、攻守が明確化し、オランダの守勢を強めさせる結果になった。
その結果が、活躍していたフラーフェンベルフ選手を下げて、DFアケ選手の投入であった。
これにより、完璧に5バック構成となったオランダであったが、両SBが守備に課題のある選手であり、十分な守勢に回れなかったように感じた。
守勢に回ったオランダが主導権を握り返すためにブロビー選手を投入。
フィジカルの強い選手で、おそらく彼にボールを集めて前線でボールを保持したい意図だったと思われるが、あまり効果を発揮はできなかった。
そもそもセカンドボールを拾うだけの前線の守備が機能していなかったからだ。
日本も前線での駆け引きで消耗していた上田選手に代わり、若い塩貝選手を投入。
更なる攻勢にかける。
日本は、冨安・菅原・伊東という交代3選手を軸に右サイドを制圧。
クロスはオランダに跳ね返されていくが、コーナーキックを重ねていく。
後半43分、日本のコーナーキックから遂に追いつく。
小川選手のヘディングが鎌田選手にあたり、軌道が変わってゴールとなった。
鎌田選手はこの試合攻守のバランサーとして動き回り、サポートを担っていた。
目立つプレーは少ないながらも、チームバランスを一手に担っており、替えの利かない名手であることを証明していた。
実はこのコーナーキックでも、ファン・ダイク選手に接触し、ボール落下地点へたどり着くのを遅らせていた。
このプレーにより、ファン・ダイク選手が小川選手と競ることができなくなっていた。
その後、小川選手のヘディングが鎌田選手にあたって軌道が変わったのは、
ロマンチックな言い方になるが、この試合ひたすら汗をかいていた鎌田選手への
フットボールの神様のプレゼントだったのかもしれない。
後半終了間際に同点においついた日本であったが、その後の対応も素晴らしかった。
やはり同点に追いついたことを考えると、この勢いで逆転を狙いたくなるものである。
もちろん狙ってはいただろうが、チーム全体としては、前のめりにならずに
バランスを崩さないように攻勢に出ていたように感じる。
これは、2018年ロシアワールドカップのベルギー戦の教訓が活かされているように感じる。
あの試合も終了間近に前のめりになったところをベルギーに咎められ、
素晴らしいカウンターを決められ敗退してしまった。
その教訓を活かして、前のめりにはならずに相手の隙を伺う程度に徹していた。
ここで評価すべきは小川・塩貝の両選手だろう。
2点目のきっかけとなった小川選手、サプライズ選出から結果を出したい塩貝選手としては、ここで決勝点を決めて結果を残したいという気持ちは間違いなくあっただろう。
そこを抑えながらチームプレイに徹した両選手は称賛に値すると思う。
試合終了後、ガッツポーズをして膝をついた鎌田選手と、険しい表情をしたファン・ダイク選手の対比が日本とオランダがこの試合の結果を象徴していたと思う。
強豪相手に2度のビハインドから勝ち点1をもぎ取った日本。
勝ち点3が1となり、更にゲームプランの弱点を晒し、3つのイエローカードを受けたオランダ。
前者は殊勲の引き分けで、後者は負けに等しい引き分けとなっただろう。
以下、選手評価
続きを読む![北中米W杯出場48か国選手名鑑 2026年 7/24 号 [雑誌]: ワールドサッカーダイジェスト 増刊 北中米W杯出場48か国選手名鑑 2026年 7/24 号 [雑誌]: ワールドサッカーダイジェスト 増刊](https://m.media-amazon.com/images/I/61razWGMOVL._SL500_.jpg)